Lipton28 blog

欲求不明です。

母のこと

母は86歳になった。

私も年を取るはずだ。

 

86歳だが、背筋がしゃんとまっすぐ伸びているので、

年齢を言うとほとんどの人が驚く。

だいたい、この年齢で毎日炊事洗濯と家事をこなしている。

 

母は皮肉屋だ。

私は小さい頃から、母の皮肉を聞いて育った。

だから自分もつい皮肉を言ってしまう。

そうとは気ずかずに。

自分なりに気をつけているつもりだが。

 

母は、長女として厳しくしつけられたからなのか、

今だにぼーっとテレビを見て過ごすことはない。

父とは対照的だ。

キッチンも風呂場もトイレも、気が付けばいつもいつも掃除している。

 

その母が、今日は具合が悪いという。

たしかに辛そうに見える。

私が父を病院に連れて行くから、その間に少し寝てろと言って家を出た。

 

でも、父が外で粗相をしたので慌てて連れて帰ると、

なんだか、押入れからいっぱい物を引っ張り出していた。

 

父をお風呂に入れて、母の布団を敷いて帰ってきた。

夜になって電話をしたら、

「ツムツムやってた」と。

具合は良くなったらしい。

 

労わってもらいたい。

でも同情されたくない。

かまってもらいたい。

でも自分の領域には入ってほしくない。

キッチンも洗面所も、掃除をされると責められている気分になるらしい。

 

我が母ながら、なかなかにこじれている。

 

6つ年上の父のことを、自分の分身のように

手を出し口を出す。

全身全霊で心配しているのだ。

多分、母の背骨は父なんだと思う。

 

母方の祖母は、海の祖母だ。

そして祖父は海の男だ。

祖母は14年間寝たきりだった。

ボケもせず、ただ病院で天井を眺めて過ごした。

今も思い出す。

私は決して優しい孫ではなかったと思う。

一緒に暮らしたことがなかったので、

入院している祖母を見舞っても、何をしてあげればいいのかわからなかった。

 

誰が見ても、仲の良い夫婦だった。

祖父は怖くて、祖母は優しい。

祖母が先に亡くなって、49日を待たずに祖父も逝った。

 

私はずっと怯えている。

これから来る未来のことを。

ずっと怯えている。