華氏451度

今日は大寒。

天気が良い分、冷えたな。

『華氏４５１度』レイ・ブラッドベリ著

数年ぶりの再読だが

あまりに悲しくなって途中で休んだ。

ミルドレットとのかみ合わない会話。

僕たちが出会ったことも

愛し合っていたことも

何もかも記憶の外へ

可哀そうなモンターグ

可哀そうなミルドレッド

父は日がな一日テレビを見ている。

見ているのか？

分からないけど。

テレビをつけて居眠りしている。

何度も天気予報を見ているけど

明日の天気は分からない。

父は本が好きだった。

よく本を買ってくれた。

誕生日のプレゼントはいつも本だった。

『小公女』『フランダースの犬』『若草物語』『飛ぶ教室』…

国語辞典が欲しいと言ったら本屋に連れて行ってくれた。

「なんでもいいから言葉を辞書で引いてみなさい」

と言われて

「読書」という言葉を引いた記憶がある。

あの時買ってもらった「明解国語辞典」今も持っている。

図書館にも連れて行ってくれた。

転勤で引っ越しが多かったけど

新しい街の図書館に連れて行ってくれた。

図書館は一人で行っても叱られなかった。

でも

もう父は

本を読まない。

日がな一日テレビを見ている。

食い違う会話。

実家には広辞苑が並んでいる。

しばらくして父は広辞苑が入っている電子辞書を買ってきた。

その電子辞書はいつもテーブルの上にあった。

ニュースを見ていても

新聞を読んでいても

良く電子辞書を開いていた。

今はもうない。

どこに行ってしまったんだろう、

あの電子辞書は。

字が滲んでゆく。

人生って残酷だな。

2022.1.20